新規就農するときに困ったことと解決してきたことを振り返る

ちょっと今度、新規就農者の一人として意見を聞かれる機会がありまして。色々思い出しながら今のうちに頭の中を整理していきがてら、せっかくなんでブログ記事にしています。

目次

そもそも、農家へのなり方がわからない

じつは・・「農家じゃないと農地を買えない・借りれない。」なんです。えっ・・農家になりたいのに、農家じゃないから畑借りれないって、ムリやん!

私は速攻で根をあげて、なり方を大阪府の農政室に相談しにいきました。

教えてもらったのは、シンプルな2通り「農業大学校などで勉強して就農する」か「先進農家さんで修業して独立する」どちらかでした。このことがわかるだけでも、行政に相談するって大事だなと思います。(このあと、もっといろんなサポートをいただくことになります)

何を準備したらいいのかわからない

いくらぐらいの資金がいるのか、経理とかどうしたらいいのか、道具は何がいるのか、そもそも何からはじめたらいいのかなどなど。

ですが、この点はそもそも「どんな農業経営スタイルを目指すのか」によって全く変わるので、やっぱりまず経営スタイルを考えて行政に相談するところからですね!

農地の借り方がわからない

先に挙げたように、農家でないと農地を買う・借りることはできません。なので、農家になりたい!という新規就農希望者はまずここでつまずきます。・・・というか、ここが障害になることにすら、最初は気付きません。だって「農家の後継者不足って聞くし、農家になりたいと手を上げたら簡単に農地があてがわれる」と思ってますから。

まず農地を借りるために、数年間の実地研修を受けつつ行政などのサポートを得て「青年等就農計画」なるものをつくり、認定新規就農者(この時点ではまだ候補)となり、ようやく農地中間管理機構を通じて農地を借りる(利用権設定)ことができます。

または、闇小作といって、地主さんと口約束(独自の契約書を交わしていても実は無効です)をして農地を借りることもできます。この場合、行政からサポートを受けることはできません。地域によっては、実質このやり方しかできない場合もあります。

信用のない新規就農希望者に農地の斡旋はなかなかないと思うので、地域や地主さんからの信用を得るために自分が入りたいと思う地域の農家さんのところへ手伝いやお話しを伺いにいくなど行動が必要です。

農業経営のスタイルがわからない

この経営スタイルが一番重要です。ちょっと長文になってしまいました。

新規就農の仕方や、農業経営のスタイルを調べるのに時間がかかった

どんな農業経営スタイルがあるのか、その情報収集に時間がかかりました。新規就農されて成功されている方の色んな書籍を買いあさって読んだり、農家さんに会ったり、セミナーやスクールに行ったり、WEBで色々調べたり。

私が農家いいなって思ったきっかけの一つは風来さんの「小さい農業で稼ぐコツ 加工・直売・幸せ家族農業で30a1200万円」を読んで。簡単に言うと無農薬の少量多品目+6次化+体験を取り入れている農家さんです。今でも本当に尊敬していて、憧れます。ただ実際いろいろ勉強していくと、向き不向きがあって、私には難易度高いやり方だということがわかりました。

次に観光農園やりたい!と思ったのはブルーベリーファームおかざきさんの「最強の農起業!」を読んだのがきっかけです。帯がえぐいコピーで、「営業日は年間60日で年収2000万円!」めちゃくちゃ夢あるやん・・。ただそのまま同じことやっても、すでに全国にブルーベリー観光農園が乱立しそうな勢いだったので、自分がこれから参入するならブルーベリー以外やなと思っています。でもブルーベリーも憧れますよねー。

また、久松農園さんの「小さくて強い農業をつくる」も新規就農する際の考え方に影響を受けました。私はめっちゃ色白なんですが、「肌が白いやつの言うことなんか誰も信用しない」といった趣旨のことが、あ、めちゃくちゃ泥臭いこともしていかないと受け入れてもらえないんだなと。でも毎日畑に出てるのに、いまだにめっちゃ肌が白い場合はどうしたらいいんすか・・

これは新規就農後に読んだ本ですが、いわさきファームさんの「新規就農2年で黒字にする方法」は、新規就農者がすぐに使えるだろう販路や作物選びの考え方を学ぶことができました。今でも愛読本です。

揚げていくと本ばっかですね。ほかにもたくさんの良書籍を読みました。

実際に色んな経営スタイルを学べたのは、農業大学校に通って実習しながら農家さんの話を聞いたり、経営指標(どの作物をどんな栽培をするといくら売り上げていくら経費がかかるのかの指標)を読み込んだりして、そのうえで↑に上げた書籍などを読みなおしてようやく実感できました。書籍だけだと、どうしても良い面しか見えないです。

農業経営スタイルの組み立て方の練習や事例があると良かったなぁ

農業経営のスタイルは、「作物の数×栽培方法×販路(販売方法)」で無限に組み合わせることができるので、本当にどれが自分に合いそうなのか、すぐには見つけることができないです。というか今もまだ試行錯誤中です。

ただ、その選択肢の例と実例がひとまとまりになっていればすごく参考になったのではないかなと思います。

たとえば大阪なら、作物の一例として特産品は「なす」「水ナス」「シュンギク・小松菜(など軟弱野菜)」「海老芋」「いちじく」「ぶどう」「栗」「みかん」などです。一番最初は地域の特産品をメインに考えて組み立てるのが良いと思います。組み立てて慣れたらオリジナリティあふれる品目にするとよいかと。最初から産地形成されていない品目をメインに据えて考えると、前例がないためシミュレーション等に苦労します。

栽培方法としてぱっと思いつくのは

  • ハウス使うの使わないの?(加温ハウス促成orハウス抑制or二重ビニール無加温ハウスor露地)
  • 栽培の培地は?(土耕or水耕栽培orポットや栽培ベッドなど根域制限栽培)
  • 農薬の利用スタイル(慣行or減農薬or無農薬)
  • 規模(何十haなどの大規模~1ha未満の小規模)

など。作物と栽培方法だけでもかなりの組み合わせができます。基本は露地、一部高単価の作物はハウスなど複合的に組み合わせることもできます。

販路としても以下のような感じ。

  • 全量買い取り型(JA部会などの系統出荷or市場への個選出荷)
  • 注文性(産直ECor八百屋などの卸業者に直販or飲食店)
  • 消費者へ直売(直売所orマルシェor産直EC・通販)
  • スーパー等小売店と契約
  • 観光農園など体験を売りにする

先に挙げた風来さんなら、多品目・露地・土耕・無農薬・小規模・消費者へ直売+体験を売りの組み合わせですね。当園ならイチジク・露地・土耕・無農薬・小規模・消費者へ直売+注文性+全量買い取りの組み合わせです。

今だからこれだけの選択肢をあげられますが、新規就農を考えていたときには、本当にまったくわかっていませんでした。なので新規就農を考え始めたときに、上のような経営スタイルの選択肢と前例をもらえるだけでもだいぶリアリティをもって考えられる気はします。

このシミュレーションは農業大学校や農業の経営スクールで練習させてもらえました。気付けばそのときに建てた計画とはまったく違うスタイルで営農していますが、今も常に考え続けています。

理想を言えば、早い段階で経営スタイルを組み立てる練習ができたらいいですよね。目指す農業が決まれば、どんなスキルでいくら資金が必要で~とかを組み立てて最短で走ることができるので。

大事なのは、品目+栽培方法+販路(販売方法)をセットで考えること

よくあるパターンで、ふわっと「無農薬野菜が作りたい!」だけで農家になるのは本当にお勧めしません。これは栽培方法だけが先行していて、どうやってお金に替えていくかがゴッソリ抜け落ちてるので・・。無農薬野菜を求めている人にどうやって接触して、どうやって採算が合うように効率よく販売するかが一番大事なところだと思います。自分が無農薬系やっていて割りに合わないなと実感しています。

作物をつくったけど、袋詰めをするための作業小屋がない

独立就農してはじめて出荷できるようになったのは、オクラとミニトマトでした。ですが、作業小屋がないため軽トラの荷台の上で袋詰めをしていました。雨の日はタープを立てて。風が強い日は袋が風に飛ばされないよう抑えながら。

農業機械やコンテナ、支柱や段ボール、クワすらも置き場所がありません。野菜の袋類は自宅に、支柱は畑に、クワは知り合いの農家さんの小屋の一部を間借りして、コンテナは必要最小限に、収穫ハサミなどの小物は軽トラに常備・・

本当にめちゃくちゃ効率悪かったです。そのことに懲りて、2年目は作業小屋を自作しました。というようなことにも、就農する前は当然気付きません!作業小屋・納屋・倉庫は大事です。

自宅と畑が離れている。もちろん自宅に納屋などない

自宅と畑の距離は大事です。私の場合は、畑までは車で片道20~30分の距離でした。真夏の昼12~14時の間は、本当に灼熱のため農作業していると能率が悪いです。

1年目はそれでも頑張って早朝から夜遅くまで畑作業していたのですが、暑さと疲労でだんだん頭も回らなくなります。すると事務作業や計画を立てたり見直すなどといったことができなくなります。就農2年目からは割り切って、真夏は早朝と夕方を農作業に充てていました。体力的にはかなり楽になりました。

しかし、一日2回往復するとなると、片道20分で計算しても1時間半くらいは自宅と畑の移動時間になります。これが毎日となると、かなりロスですよね。しかも何か忘れ物でもしようものなら・・・

今は、畑に近いところ(とはいっても車で5~10分)に引っ越しました。おかげで体力的にも時間的にも、かなり余裕ができました。ちょっと畑の様子を見てくる、ちょっとお昼を食べに家に帰る、といったことが気軽にできるようになりました。

と言いながら、自宅と畑の距離が30分以上かかる先輩もいたりして、ビビります。体力おばけや・・

移動手段が公共交通機関しかない

大阪市内在住&勤務のシティボーイ(笑)だったので、車も原付バイクすらも持っていませんでした。移動は常に地下鉄か終電逃してタクシーか趣味のロードバイク。当然それでは農家なんてできません!

最初に買ったのは原付バイクでした。新規就農の先輩に「農家さんところに勉強にいくときにも駐車場ない場合もあるから、まずは原付あったほうがいいで!」と教えてもらって購入。ちょっとした畑間の移動などにも使えて、便利です。

次に買ったのが軽トラでした。いちじく畑や作業小屋をつくるとき、支柱や肥料を運ぶ必要がありますし、そのほか何をするにも軽トラが一番汎用性あると思います。(配達にはバンタイプが適していると思いますが)

原付はともかく、軽トラだけで超ボロボロの中古でも30万円~しますので、ちょっと思い切った投資になりますよね。

道具や資材が何一つない

クワから収穫ハサミ、収穫コンテナ、袋詰め用の道具、こまごまと色んな道具が必要です。トマトなどを作るにも野菜を支える支柱や、それを地面に打ち込むハンマー、資材も道具も、細かく揚げればキリがありません。就農して4年目ですが、気付いたら細々とした道具や資材費だけで100万円ぐらいは使っていると思います。もっとかもしれません。帳簿振り返るの怖いよー

安定生産するためのビニールハウスなどの設備がない

今は資材費もあがり、規模によりますが一棟たてるのに百万円以上かかるそうです。自作したとしても100万円近くです。色々補助金もありますが、なかなかしんどいですね・・。仮に150万円として、その分の利益を上げてペイできるのに何年かかるのか・・返し終わる前に台風でも直撃しようものなら目もあてられません。

とはいえ、私もそろそろビニールハウス建てたいです・・

補助金を活用したいけど、よくわからない

まず、どういうことに使える補助金があるのかすら、常にアンテナを張っていないとわかりません。

また、やりたいことはたくさんあるし、どの補助金が使えそうだということまでわかっていても、目の前の畑作業などに追われていて補助金の申請手続きにまで手が回りません。これ、いままさに私が困っていることです。

結果的に、余裕があり慣れているベテラン農家さんほど上手に補助金を活用できている気がしています。まぁ、自業自得で妬み以外の何物でもないんですが・・でも新規就農5年目までは補助金申請を無料相談とかしてくれたら嬉しいかもしれない。普及員さんに相談したらサポートしてくれたりするんですかね?

まとめ

新規就農って、何もないゼロからの起業なので、まとまった投資と現実的な経営計画が必要です。

振り返ってみて、「農家になるのに何から手を付けたらいいのかわからない」のは当たり前なんだなと思いました。経営スタイルが無限にあるので、農家になると一口に言うだけだと「俺は社長になる」って言ってるのと一緒なんだなと。なんの会社するの?どんなお客さんに何をいくらで売るの?原価はどのくらいかかるの?ってことを決めてはじめて、何を準備すればいいのかわかるんですよね。

うん、たぶん新規就農者をサポートするには、ここの認識のすり合わせと経営スタイルを考えることからですね。だから行政に相談にいって「何つくるの?」って一言目に聞かれて戸惑う方がいるんでしょうね。認識のズレだなー。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

モチベーション上がるのでシェアお願いします!

気軽にコメントしてください~

コメントする

CAPTCHA


目次