いちじくの歴史

いちじくの歴史その3~古代の人たちが、いちじくをどう食べてきたのか?~

こんにちは。大阪のいちじく農家ハッピーファーム園主の吉川です。

さて、いちじく農家をやっているとときどき、いちじくについての講師っぽいことをお願いされることがあります。

そこでよく聞かれるのは、「いちじくってどうやって食べると美味しいですか?」という質問です。

「完熟のいちじくを冷蔵庫で1時間ほど冷やして、そのまま食べるのが最高に美味しいですよ」って胸を張って言うのですが、だいたいそのあとそれ以外の食べ方も聞かれます。クリームチーズや生ハムと合わせたり、バナナと一緒にスムージーにしたり、意外なところだとキムチとも相性いいので、聞かれたときはそのあたりを紹介しています。

詳しくは「毎日いちじく」コーナーでいちじくレシピをたくさん記事にしてるので、よかったら見てくださいね。

さて、今回はいちじくの歴史シリーズ第3弾として、古代の人たちがどうやっていちじくを食べてきたのかを勉強したので記事にしていきますね。

古代における中近東地域でのいちじくの食べられ方

いちじくの栽培は中東、とくにアラビア南部(現在のイエメン、オマーン、サウジアラビアなど)からはじまったと言われています。その後、北上してメソポタミア(現在のイラク、イラン、シリアなど)に広まったそうです。

ただし上記の時代は文字による記録がなく、現在のところ食べられ方はわかりません。ですが、現在でもアラブ地域では乾燥いちじくが大量に市場に並んでいること、またナイル川の周辺で古代のバスケットに入ったナツメヤシと乾燥いちじくが見つかっていることから、シーズン中には生のままで、主には乾燥させて保存食として食べられていたと考えることができます。

大量の乾燥いちじくと行商人(AI画像生成)

また食文化史を研究しているベルナルド・ローゼンバーガーさんという方によると、「古代アラブではフルーツはただの軽食か付け合わせとしてしかなかったけれど、イチジクとブドウは別だった」とされているので、いちじくが主食またはそれに近い立ち位置だったことがうかがえますね。

紀元前2700年ごろのエジプトでは、第2王朝のサッカラの墳墓から、いちじくを煮込んだ料理(現在のジャムやコンポートに似たもの?)が見つかりました。また、エジプト人もいちじく入りのパンやケーキを好んで食べたと言われています。

紀元前1600年~1100年頃に反映したヒッタイト(トルコなど)の王室文書には、乾燥イチジク入りのケーキが登場することから、乾燥いちじくを使って様々な料理をされていたのかもしれませんね。

古代におけるギリシャやローマでのいちじくの食べられ方

ギリシャ「食卓の賢人たち」にたびたび登場する、いちじくの食べられ方

古代ギリシャで2世紀ごろの作家アテナイオスがのこした「食卓の賢人たち」という書籍では、生のいちじく乾燥いちじくワインと合わせたり煮込んで食べたりする描写や、またいちじくジュースを飲むと子供が大きく育つという記述もあるそうです。

また、宴席ではデザートとして、乾燥いちじくをワインで煮こんだ料理がふるまわれた描写があります。

また、このころからイチジクとチーズを合わせて食べていたそうです。現在でもイチジクとチーズはいい組み合わせの食べ方ですね。

また現在のように白いパンが一般的でなく、雑穀入りパンが中心だった時代には、乾燥いちじくを入れて甘みを補い食べやすくしたことも考えられ、「食卓の賢人たち」にもそのようなことを示す描写があるそうです。

乾燥いちじくにスパイスを加えてワインで煮こんで食したそうです(AI画像生成)

古代ローマでのいちじくの食べられ方

1世紀ごろのローマの軍人プリニウスが書いた「博物誌」には、生のいちじくの品種差や味・大きさ・産地などを記録されていることから、新鮮な完熟いちじくも楽しまれていたことがわかります。

またカトーの「農業論」では、乾燥いちじくを労働者たちの食事として与えた描写や、いちじくをワインなどの液体で煮て保存性と甘味を高める描写もあるそうです。

また4世紀ごろの料理書「アピキウス」には、いちじくをペースト状にし甘味料として利用することが記述されています。そのほか、いちじくのワインを愛飲していたり、イチジクとローリエとハムを一緒に茹でてハチミツを刷り込んだ料理が出てくるそうです。

「オックスフォード・コンパニオンシリーズ イタリアの食べ物」という書籍には、ローマ時代の慣習として、ナツメヤシとイチジクが蜂蜜に浸して保存されていたと記述があります。

いちじくとローリエ、ハムを煮込むとこんな感じ?(AI画像生成)

中世ヨーロッパにおける、いちじくの食べられ方

以下は15世紀の「Curye on Inglysch」というレシピから。

滋養によさそうなレイピー

乾燥イチジクと干しブドウをワインで煮たたせ、すりつぶして濾し、鍋で香辛料とパンくずや米粉などを加えて塩で味を整える「レイピー(leype)」という郷土料理があります。きっとそれぞれの地方や家庭で少しずつレシピが違うんでしょうね。味わいは、いちじくの自然な甘さを活かしたほんのり甘いおかゆみたいな味がするんでしょうか・・?

いまでも通用しそうなお菓子「トゥートレット」

乾燥いちじくを細かく刻み、サフランとパウダーフォートを加え、薄くのばした生地で包んで油で揚げ、蜂蜜を塗ってあぶって食べる「トゥートレット」という料理があります。現代のパイ包みっぽい料理みたいですね。いちじくとチーズをはさんだパイ、もう美味しい気しかしませんね。

トゥートレットのイメージ(AI生成画像)

まとめ

古代の中近東では、生食のほかに乾燥いちじくが好まれていたと思います。保存も効き栽培も簡単ないちじくは、まさに恵みの木だったんじゃないでしょうか。

古代のギリシャやローマでは、生食・乾燥いちじくのほかに、ワインで煮たりハムと一緒に食べたり、チーズと合わせたりなど少しずつ現代の食べ方にも通じてきました。

中世ヨーロッパでは、いまでも通用しそうな、いちじくのパイ包みのような料理方法があったようです。

いかがでしたでしょうか?現在のように砂糖が存在しなかった時代には、乾燥して保存食としても、また皮ごと食べられる調理の簡便なところ、そして何よりも甘いということが、どれだけ有難い存在だったのかが伝わってきますね。

この記事は「イチジクの歴史」という書籍を大いに参考にさせていただきました

とっても楽しい本ですので、いちじくの歴史についてもっと知りたい方はぜひ。


yoshikawa